ちょっと興奮気味のamahikasです。クイーンとフレディの活動を綴った映画『ボヘミアン・ラプソディー』を11月8日に見てきました。日本での公開日は11月9日ですが、たまたま前夜上映があることに気がつき、慌てて席を確保しました。ラッキーでした。
この記事では、映画『ボヘミアン・ラプソディー』の感想を書いていきたいと思います。
なお、ネタバレはしないように気をつけて書いたつもりですが、完全にネタバレを排除して感想を書くのは難しいので、ネタバレを排除したい方は映画を見終わってから読んでいただければと思います。(ネタバレを含む感想は2ページ目に書きました)
それとこの記事は私の独断と偏見で書いております。異論反論はあろうと思いますが、いちクイーンファンの意見として読んでいただければ幸いです。
公開までの経緯
クイーンの活動を映画化することについては10年くらい前から噂があり、楽しみにしていました。クイーンは音楽だけでなく、MTVが流行る前からPV(プロモーションビデオ)を制作していたり、映画『Flash Gordon』のサウンドトラックに挑戦したりと好奇心が強く、活動の幅が広いバンドでした。フレディの死後にもクイーンの音楽をもとにミュージカルやゲームを作ったりしています。個人的にクイーンは音楽とライブパフォーマンス、ファンとのつながりの強さが好きなポイントですが、好奇心が強く、新しいことに挑戦していく姿勢も好きです。
さて、映画の話しに戻りましょう。今回の映画制作はかなり難航したようです。企画が正式に発表されたのは2010年ですが、監督と主役がしばしば代わりました。主役には何度も候補の名前が挙がりましたが、製作が順調に進んでいるというニュースが入ってくることはなく、こりゃ完成しないかななんて思ってました(笑)
映画に対する興味が薄れているところに入ってきたニュースがラミ・マレックがフレディ役に決定したというものでした。ラミ・マレックは映画の『ナイトミュージアム』シリーズで有名ですが、私はTVドラマの『ザ・パシフィック』と『24 -TWENTY FOUR-』のファイナルシーズンが強く印象に残っていました。特に『ザ・パシフィック』では戦死した兵士の歯から金を取り外すゲスな伍長役を演じるんですが、そのシーンの表情が狂気に満ちていて嫌悪感を覚えました。
逆に言うと、これくらいぶっ飛んだ演技ができる人じゃないとフレディを演じるのは難しいんじゃないかと感じました。この辺からクイーンの映画に再度期待を寄せることとなりました。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』の予告編を初めて見た時は期待値がさらに上がりました。
そう言えばQueenの映画の予告編も公開されましたね。
話しが出てから10年くらい待たされてる気がするので、一度は見ておくかなくらいの期待感だったんですが、映像を見る度に期待が高まります。こだわっただけあってかなりいい出来になってそう。https://t.co/Y2mG7aOyF5— あまひ (@amahikas) 2018年7月22日
予告編を見る前には、映画はなんとか完成するものの小規模の上演になるのかなと思っていました。「クイーンの映画を観たいと思うのはコアなファンくらいでしょ」とずっと思っていたんですね。
ただ、途中から20世紀フォックスが配給を担当してることもあって、すごい規模で上映されるんだと気がつきました。自分が気に入れば、興行成績はあまり気にしないほうですが、そこは一番好きなバンド、クイーンの映画とあって大失敗はしないで欲しいなぁと願うようになりました。
今年の夏頃になると予告編も増えてきてますます私の期待は高まるとともに、これは意外とヒットするんじゃないかと思い始めました。しかし、期待に反して専門家の評価は厳しいものでした。フレディの私生活(私性活)やエイズの闘病、LGBTについて描かれているシーンが少ないというのが評価を下げた主要因のようです。
批評家の評価をよそに公開後は誰もが想像していた以上の興行成績になっています。北米ではグレイテスト・ショーマン、レ・ミゼラブル、ラ・ラ・ランドの公開1週目の興行成績を超えたようです。世界的にも第1週目の成績が非常に良く、Brian May本人もあまりのうれしさに以下のTweetをしてました。
I don’t usually publish stuff like this. But this is a uniquely thrilling moment. Our Freddie film went straight to number 1 in the UK last week, and this weekend it played on 4,000… https://t.co/0yz0ztrePO
— Dr. Brian May (@DrBrianMay) 2018年11月5日
そんなわけで期待以上の成績となっているわけですが、実際にどのような感想だったかを書いていきます。
感想
めちゃめちゃ良かったです。細かいところで数え切れないほど気になる点はあるものの、全体的には大満足です。
何故この映画は作られたか
この映画を観る上で重要なのは何故映画が作られたかということだと思います。映画の話しと少しズレますが、フレディの死後にブライアンとロジャーが今でもクイーンの名前を使って活動しているのはクイーンの音楽をより多くのひとに聴いて欲しいと願ってるからだと思っています。
クイーンはフレディの死後に『Made in Heaven』というアルバムを発表しています。フレディが残した録音物を元に製作したアルバムですが、発売当初はクイーンファンの間でも賛否がありました。金が欲しいからとかフレディを利用してるという意見もありました。
私自身も大いに戸惑いましたが、最終的にはブライアンとロジャーが「クイーンの音楽をより多くのひとに聴いて欲しい」と願って活動しているという結論に至りました。『Made in Heaven』を肯定的に捉えられるようになったのはこの二人の意図を自分なりに解釈できてからです。
ブライアンとロジャーは今回の映画以外にもいろんな活動をしています。Queen+名義でポール・ロジャーズ、アダム・ランパードとのツアー、『We Will Rock You』というミュージカルの制作、『Queen:The eYe』というパソコンゲームも作ったりしました。当たり外れはありますが(笑)、他にもいろんな活動をしています。今回の映画はこういった活動の延長線上にあるものと理解していたので、映画制作の話しを聞いたときから「クイーンの音楽をより多くのひとに聴いて欲しい」作品になるんだろうなと思っていました。
現実的にこの映画はそういった作品になっています。フレディを中心に進行しますが、あくまでもクイーンの音楽と活動に焦点はあっていて、最後もクイーンの魅力を伝えるシーンで締めくくっています。多くのミュージシャンの伝記映画がそうであるように「クイーン万歳」というタイプの映画ですね。
実際にインターネット上でいろんな感想を読んでいると、肯定的な感想は「クイーンの音楽は知ってるけど、内情は知らなかった」「クイーンはあまり聴いたことがないけど、この映画でもっと聴きたいと思った」というものが多いように感じました。(あくまでも私がそういう意見しか受け入れてないだけかもしれませんが(笑))
私が鑑賞した回だと10〜20%は30未満の若い方だったので、「クイーンの音楽をより多くのひとに聴いて欲しい」という想いは通じてるんじゃないかなと思います。
クイーンは定期的に日本でブームが起きていますが、今回も映画のおかげでブームになりそうですし、世界規模でもブームが起きていると感じます。個人的に今回の映画はこれまでブライアンとロジャーがやってきた様々な活動の中でも大成功の部類だと思います。
否定的な意見について感じたこと
否定的な意見についても言及しておきましょう。
前述した通り、フレディの私生活(私性活)や闘病について掘り下げて欲しかったというのは納得です。ただ、あまりやりすぎるとR-18になるのは間違いがなく、それでは映画化をした目的から外れてしまいます。それとフレディはゲイであることを公表しませんでしたし、エイズが発症していることも死の一日か二日前に公表したのみです。インタビューを聞いても自分の音楽や歌詞について説明をするのを嫌っていて、「受け手が好きなように解釈してくれ」というタイプだったので映画化をするにしてもすべてを明るみに出すのに賛成したとは思えないです。
LGBTについてもう少し突っ込んで欲しいというのもわからないでもないです。何故、ゲイ(もしくはバイセクシャル)になったか、どのように気がついたか、苦悩はどういうものだったか、などを描いて欲しいと感じた方もいるようです。
ただ、今回はクイーンの映画ですし、フレディがLGBTを代表して何かを発信する人でもなかったので、この映画にそういった要素を期待するのは筋違いと感じます。ちなみに私は『Lの世界』というドラマが大好きで全シーズン観ましたし、『Glee』はもっと好きなドラマなのでLGBTに対して比較的寛容なほうだと思っています。そんな私でも今回の映画にLGBTに関する詳しい描写は期待していませんでしたし、求めていませんでした。やはりLGBTをメインで扱う作品とそうでない作品は分けて考えるのがいいと思います。
こういった否定的な意見を読んでいて思ったのは『フレディ・マーキュリー』という映画を作るのがいいんだろうなということです。クイーンの歴史はさておき、フレディの一生に焦点を当てつつ、ダークな部分も含めて映画を作ればいいのかもしれませんね。
キャストについて
最後に私自身が感じた肯定的な点と否定的な点を書いておきます。
肯定的な点ですが、キャストが良かったです。もちろん完璧とはいきませんが、クイーンのメンバーを演じた役者たちはそれぞれに味があって良かったです。
賞賛されているフレディ役のラミ・マレックですが、私が一番感心したのは体の線です。フレディのしゃべり方や見た目、ステージでのパフォーマンスを真似るのはこのレベルの役者ならできると思いますが、フレディ特有の体の線を真似るのは難しいと思っていました。ラミはしっかりと体も作ってきたんだなと思います。ただ、体の線を似せたために少しやせた感じになってしまったのは残念です。もう少し量感があれば完璧でしたね。それとしゃべる時のテンポが遅かったです。フレディはもっと早口でまくし立てる人で、ゆっくりとしたテンポでしゃべるのは情感を込める時でした。映画ではほとんどがゆっくりとしたテンポだったので残念でした。
ブライアンを演じた グウィリム・リーは完璧でした。文句のつけようがないです(笑)
ちなみに私はブライアンの思慮のある落ち着いたしゃべり方が大好きです。そこもよく演じてました。
次にロジャーを演じたベン・ハーディです。見た目、しゃべり方がもっとも似てませんでしたね。ただし、ロジャーの悪ガキのような性格や雰囲気をよく演じていたと思います。雰囲気だけでいうと一番良かったです。
ジョンを演じたジョゼフ・マゼロは外見、しゃべり方ともに良かったんですが、表情がいまひとつでした。気難しい表情をすることが多くて、その表情は確かにとても似てるんですが、実際のジョンはもっと表情が豊かで、笑顔もとても素敵です。もう少し表情にバリエーションが欲しかったところですね。
時系列が事実と異なる
否定的な点は二つあります。ネタバレをしたくないので、ここではひとつに留めておきますが、時系列が事実と違う点が多かったのが何よりも残念でした。映画としての演出は必要なので、完璧に事実通りに映画化しなくても良いのですが、事実と違う不要な演出が多かったと感じました。ここが唯一の減点ポイントです。
そんな中でも一箇所だけ事実と異なる演出でも仕方がないと感じた場面があります。これもネタバレになるので後述します。
まとめ
そんなわけで期待していた以上の出来で、大満足の映画となりました。音楽映画はよく観ますが、クイーンファンとして贔屓目に見てもレベルは高いですし、エンターテインメント作品としても多くの人を感動させることができると思います。
インターネットでいろんな感想を読みあさりましたが、一番印象的だったものを紹介しましょう。
The Critics where wrong about the song in 1975,and they are wrong about the movie in 2018
タイトルがすごく良いですよね。簡単に訳すと「批評家は1975年に、歌に対する評価を間違えたが、2018年も映画に対する評価を間違えた」。こんなところでしょうか。
批評家の評価を私は尊重していますし、いろんな感想があって良いと思います。また、前述した通り、もっと深くクイーンやフレディのことを掘り下げて欲しかったという批評も理解できるので映画としての評価を下げてしまったのもわかります。しかし、結果的に大ヒットとなっているのは1975年に”Bohemian Rhapsody”が曲としてリリースされた時とよく似てますよね。
この映画を観てクイーンはファンや観客とつながるの非常にうまいバンドだったんだと思いました。これは私自身も初めて気がついたことです。いくら批評家や専門家がダメだと言ってもバンドとファンが共鳴してしまうんですよね。クイーンってそんな力も持った不思議なバンドだなと初めて思い知らされました。
クイーンはいろんな特徴や魅力があるバンドですが、もしかしたら一番の強みはファンとのつながりの強さなのかもしれませんね。
映画を見終わってから帰宅をして真っ先に本家のライブエイドのパフォーマンスを見ました。映画もとても良かったんですが、やっぱり本家だなぁと思ったのが正直なところです。
ただ、この映画には私のようなファンでも「クイーンを見たい、聴きたい」と思わせる力があるのは事実で、そこが一番評価したいところです。
本家のライブエイドを見た後に見たのはこの映像です。
ライブエイドのパフォーマンスの後、バンドは休暇を予定していたそうですが、ライブエイドでやる気が戻って来てスタジオ入りをしました。その時に録音したのが”One Vision”です。
この曲はアルバム『A Kind of Magic』の一曲目であり、クイーン最後のツアーとなるMagic Tourの一曲目にもなりました。メンバーが楽しく曲を作り上げているのを見るのが何よりの楽しみです。この動画を見た後は必ず、リリース版の曲も聴いてしまいます。
クイーンに限った話ではないですが、たとえ1曲であっても苦労をして作品にしてるんだなということがよくわかります。
最後になりますが、50年近く生きてきて初めて「映画の力ってすごい」と感じました。音楽ほどではありませんが、映画も好きでよく見ているんですが、見慣れたライブエイドのパフォーマンスがあんなに魅力的で生々しく感じたのは初めてでした。また、パフォーマンスの途中でフレディーの両親、メアリーとジムを写して感動を誘うって映画じゃないと出来ないことですよね。前述の通り、帰宅してから本家のライブエイドのパフォーマンスを観たら本家のほうがいいじゃんって思ったんですが、映画館にいた2時間30分弱は映画の世界に浸ることができました。そしていつも見聞きしているクイーンとは違う感動を与えてくれました。
私にとっては映画の力のすごさを感じさせてくれる初めての映画になりました。
さて、ここでこの記事は一旦終わりにしますが、ネタバレになってしまう感想を次ページに書いておきます。問題のない方はお読みくださいませ。
クイーンについてこれまで書いてきた記事も合わせて参考にしてください。
次ページにネタバレとなる感想を書きます。
コメント
最後まで読みましたよー。
そうだね、確かにロジャーとブライアンもソロアルバム出してたね。
フレディーのワンマンバンドのように映画が描かれてるのには少し疑問が残る。
劇中歌に少し違和感を感じた理由も分かりました。
ありがとう!
[…] 余談ですが、映画の『ボヘミアン・ラプソディ』の製作にあたって誰がフレディーを演じるのかということに一番注目していましたが、次に注目していたのはロジャー役です。というの […]